この記事は Agent Grow Advent Calendar 2023 の記事です。
シンセサイザー……良いよね……
シンセサイザー(英語: synthesizer)は、一般的には主に電子工学的手法により楽音等を合成(英語: synthesize:シンセサイズ)する楽器「ミュージック・シンセサイザー」の総称。いろいろな音が作成・編集できる鍵盤楽器。電子楽器、音源と呼ばれることもある。
―― Wikipedia contributors. “シンセサイザー.” Wikipedia. Wikipedia, 3 Oct. 2023. Web. 5 Dec. 2023.
この世に存在する「楽器」の中で、私が特に愛しているのはシンセサイザーである。
特に、バーチャルアナログシンセサイザーは格別だ。
電子楽器との出会い
私が意識的に「電子楽器」に出会ったのは、小学6年生の頃のことである。
インターネットなんてものはなくパソコン通信ですら憧れの存在であった当時、小学生が入手できる最も高尚な情報ソースといえば、田舎の書店でも安定して購入することのできた電波新聞社刊行の「マイコンBASICマガジン」であった。
PC-9801シリーズやX68000などのソースコードが並んでいる紙面の片隅に、伯父から譲り受けたMSX 2+で動くプログラムソース――MSX-BASICのコードが1~2本程掲載されていた。
そのお下がりなMSXは、3.5inchのフロッピーディスクドライブが搭載されていたが壊れており1)今から思えばゴムベルトが劣化してただけだと思うが……、いくらCtrl+Sを押してもプログラムコードは保存されなかった。2)そもそも保存するにはコマンドの実行が必要であった
もちろん市販のオーディオカセットデッキを使えばプログラムのSave&Loadはできたのだが、
- 電源Onと共に300行そこらのコードをタイプ
- 実行コマンドを勢いよくタイプした後に見つかるSyntax Error
- 必死こいて修正(2~3を任意の時間繰り返す)
- やっと実行成功!
- その事実に満足し、電源Off
という、今から思えば苦行としか系用のしようがない行為を連日楽しむ毎日であった。
さて、このMSXにはPSG(Programmable Sound Generator)音源が搭載されており、ザックリいってしまえば音楽を奏でることができた。
「音楽を奏でられる」といっても最大3和音程度3)イメージ的には「初期ガラケーの着メロ」であるであり、鍵盤の代わりにMML(Music Macro Language)のお作法に則った文字の羅列と格闘しなければならないわけではあるが……。
まあ各々いろいろ言いたいことや思うところはあるかもしれないが、ソイツは確かに「音楽」を奏でることができたのである。
鍵盤楽器との出会い
そんなこんなでプログラミングの合間に「電子音楽」を時折楽しむ日々が続くわけであるが、興味関心の対象が「マイコン+音楽」に移り変わるのにそう日数は要しなかった。
近所の書店に出かけても「パソコン・ホビー」棚で大半の時間を過ごしていたあの頃は今も昔。その裏に陳列されている「音楽・ファッション」棚という客層が180度は違うであろうゾーンに足を踏み入れるのは自然な流れであった。4)そのころに少しばかりでも「ファッション」への興味が生まれていたら、また違った人生があったのだろうが……
さて、一口に「音楽雑誌」といってもさまざまである。
ギターやベースといったメジャーな楽器をフィーチャーしたものもあれば、当時の音楽シーンを彩っていたバンドが取り上げられたものもある。
売り場全体が極彩色に彩られているかのような錯覚を覚える中、当時中学2年生頃の私の目に留まったのはリットーミュージック社刊行の「Keyboardマガジン」であった。
お目当てはキーボーディストのインタビューではなく、広告やレビューページで紹介されている機材たち。
目玉が飛び出るような金額の機材が並ぶ。紙面上を所狭しと埋め尽くす機材たちに、心を強く動かされた。
成長と共に広がりゆく行動範囲。「市内に1件しかない楽器店」が含まれるようになるまでに、そう多くの時間は要さなかった。
なんせ田舎の楽器店である。ギターかピアノがラインナップの大半で、シンセサイザーなんぞお店の片隅に1台置かれていただけに過ぎなかった。
そう、「片隅に1台だけ」置かれていたのだ。
「まさに羊の皮を被った狼である」とのキャッチフレーズが有名(?)な「Roland XP-50」がそれである。
「高校生になったらバイトして返すから」との決め文句5)このような口約束は履行されないケースが大半であることを申し添えておこうで粘り強い交渉をした結果手に入れた、マイファーストシンセサイザーである。
Xp-50というミュージックワークステーションについて
このXp-50であるが、俗にいうところの「ミュージックワークステーション」と呼ばれるタイプのシンセサイザーである。
最大同時発音数は脅威の64音。16トラックの「シーケンサー」を搭載しており、リアルタイム or ステップ入力で演奏データを記録できた。
SR-JV80 Seriesという拡張ボードを最大4枚搭載可能で、音色の拡張性もバツグン。独立した3系統のエフェクタもあり、言うことなしである。
ライブでもスタジオでも大活躍間違いなしの名機。それがRoland XP-50である。6)もっともXP-50は61鍵しかないので、そういう用途で使うときは上位機種であるXP-80をチョイスするのが常である
バーチャルアナログシンセサイザーとの出会い
そんなこんなでシンセサイザーとの生活をエンジョイしていたある日、Roland JP-8000というシンセサイザーが登場した。
コイツはXP-50のようなミュージックワークステーションとは訳が違う。画に描いたようなシンセサイザー。それがJP-8000である。
カテゴリ的には「バーチャルアナログシンセサイザー」などと呼ばれている。
鍵盤も49鍵しかない。同時発音数もたった8音だ。
だがそれがどうした?そもそもコイツが担当するのは大抵シンセリードやパッドサウンドであり、同時発音数や鍵盤の少なさは問題にならないじゃないか。
シーケンサーなんて小洒落たものはない。7)そもそもこの機種にはいらないけど……
でも、心躍るつまみやフェーダーが盛りだくさんだ。RPS(Realtime Phrase Sequencer)やアルペジエータもついていて、リボンコントローラーまで装備されているのだ。
それ以上を望むなんて「贅沢にも程がある」というものだろう。
そんな本機を語る上で絶対に外してはいけないキーワードと言えば、やはり「SuperSaw」であろう。8)人類が発明した最高傑作である
周波数が微妙に異なるノコギリ波を7つ重ねた波形をしていて、控えめに言ってメチャクチャ重厚な音9)トランス系などのダンスミュージックを中心にアチコチで使われてるので、もしかしたら貴方もどこかで聞いたことがあるかもしれないを作ることができる。
ぜひ機会があったらその手に触れてみてほしい。そのルックスに惚れ、音に惚れることだろう。そして、JP-8000を買った後に、モジュール音源型のJP-8080の存在を知り、そっちも欲しくなるだろう。
それがRoland JP-8000なのだ。
アナログシンセサイザーについて
「バーチャルアナログシンセサイザー」というからには、「バーチャルじゃないアナログシンセサイザー」は存在するのだろうか?
その答えはYesだ。
アナログ回路で構成されたシンセサイザーは非常にシビアで、温度変化による部品の特性変化や電圧変動などで容易に音が変化する。
複雑な音を出そうとすればするほど、同時発音数を増やそうとすればするほど、その回路構成は煩雑なものとなり大型化するし消費電力も増大する。
しかし、「温かみ」や「華やかさ」のあるなどと形容されるアナログシンセサイザーにしか出せない音は、時代を超えて多くの人々に愛されているのだ。
MoogやProphet-5あたりが有名だろうか。とりあえず、(特に初期の)YMOのライブ映像を見てもらえれば話は早い。
思い出のシンセは他にもあるけれど……
にわか知識満載でお届けしている本稿ではあるが、長くなってきたのでこの辺で留めておこうとおもう。
他にも愛するシンセサイザーは山ほどあるのだが、その話はまた別の機会に。
余談だけど……
シンセサイザーは毎年さまざまな色々な機種が登場しているが、いずれもカラーバリエーションが似通っている。
大抵黒か白が定番10)シルバーなどもあるがこれらのバリエーションに過ぎないで、カラフルなのはNordくらいじゃないだろうか?
でも、記憶の中のシンセサイザー――特に1995年頃に出たシンセサイザーはとかくカラフルだったような気がする。
中でも記憶に残っているのはWaldorfのQ!ぜひ下記のリンクをクリックしてみてほしい。目に痛い黄色に赤いノブ!そうそう!こういうのでいいんだよ!
あと、E-MUのAudity 2000!目の冴えるようなブルー!アレも最高にクールだった!11)なんならE-MUの音源モジュールはカラフルなのが多かったよね
俺は!ああいうカラフルなシンセが好きなんだ!
注訳はこちら
↑1 | 今から思えばゴムベルトが劣化してただけだと思うが…… |
---|---|
↑2 | そもそも保存するにはコマンドの実行が必要であった |
↑3 | イメージ的には「初期ガラケーの着メロ」である |
↑4 | そのころに少しばかりでも「ファッション」への興味が生まれていたら、また違った人生があったのだろうが…… |
↑5 | このような口約束は履行されないケースが大半であることを申し添えておこう |
↑6 | もっともXP-50は61鍵しかないので、そういう用途で使うときは上位機種であるXP-80をチョイスするのが常である |
↑7 | そもそもこの機種にはいらないけど…… |
↑8 | 人類が発明した最高傑作である |
↑9 | トランス系などのダンスミュージックを中心にアチコチで使われてるので、もしかしたら貴方もどこかで聞いたことがあるかもしれない |
↑10 | シルバーなどもあるがこれらのバリエーションに過ぎない |
↑11 | なんならE-MUの音源モジュールはカラフルなのが多かったよね |