来年は寅年です。
この記事は Agent Grow Advent Calendar 2021 6日目の記事です。
虎とは強い動物。
虎とは希少な動物。
虎は古来よりその力強さと美しさ、そして狂暴さから人々に恐れられ、敬われてきました。
来年は寅年、それも壬寅(みずのえとら)と呼ばれる年となります。
壬寅は厳しい冬の時期を越えて、春の成長を意味するイメージを持つ干支とされています。
前年は「丑年」でしたので、牛の持つ忍耐とじっくり歩を進める堅実さを象徴する年でしたが、
今年はそこから成長、飛躍して虎のような力強い一歩を踏み出す年になれる事を願わずにはいられません。
そんなわけで、日本の動物園で見る事ができるトラをご紹介します。
なお、写真はすべて、執筆者が自分で撮影したものです。
◆◆ベンガル系トラ◆◆
ネコ目ネコ科ヒョウ属の「トラ」は、現存する6種類の亜種が認められており、
日本ではそのうち、「ベンガル系トラ」「アムールトラ」「スマトラトラ」の3亜種を見る事ができます。
そのうち、世界で最も数が多いとされる「ベンガルトラ」
世界で3000頭しか生き残っていない野生のトラの中で、凡そ半分以上を占めると言われています。
トラの中では2番目に大きく、東南アジアからインドにかけて広く密林に生息しています。
実は、日本で飼育されているベンガルトラには「ベンガル系トラ」という呼称が使われています。
これは、血統管理がまだ不十分だった時代に、異なる亜種と血統が混じっている事が理由となっています。
栃木県那須サファリパークのベンガル系トラ。
那須サファリパークには一般的なベンガルトラ以外にも、非常に珍しい「ゴールデンタビー」という金色でモフモフの毛皮のベンガルトラもみる事が出来ます。
サファリパークという事もあり、自家用車、もしくはサファリカーや園内バスで施設に入り、中の動物たちの間近を走る事が出来ます。
なお、自家用車でサファリに入る場合は、集まってきた草食動物たちのヨダレで車がべっとり汚れてしまう危険があるのでご注意を。
サファリを出た駐車場には洗車場もありますが、草食動物のヨダレはちょっとやそっとでは落ちないので、大事な車で来園した場合は、大人しくサファリカーをレンタルしましょう。
次も、茨城県かみね動物園のベンガル系トラ。
野生でも自由にごろ寝が出来るのは、生態系の頂点にある証拠でもあります。遠くから寝ころんでいる姿は、まさに大きなネコ。
とは言え、ネコと違って太い肩に太もも、強力な顎の力をもたらす大きな頭、そして美しいトラ柄、
そして大きな「鼻面」は、大型肉食動物の何よりの特徴です。
トラは、自分より遥かに大きな獲物を仕留める事も出来ますが、それはこの大きな鼻面に秘められた顎があればこそなのです。
国内では、ほかに東北サファリパークなどでベンガル系トラを見る事が出来ます。
ベンガルトラにはもう一種、変わった毛色のトラが居ます。
それがこの「ホワイトタイガー」と呼ばれるベンガルトラです。
埼玉県の東武動物公園のホワイトタイガー。
白い毛並みに黒い縞のこのトラは、正式名を「ベンガルトラの白変種」と呼びます。
1951年、インドで捕獲された白い毛並みのベンガルトラを祖とした、人為的に毛並みを固定化した種類のトラたちです。
同じく東武動物公園より。
東武動物公園では、雄の「ロッキー」、雌の「カーラ」、二匹の子供の「スカイ」、そして新顔の「シュガー
の4頭のホワイトタイガーを見る事が出来ます。
どの個体も人馴れしており、人の前に近づいてきたり、人前であられもない姿を見せてくれる事も。
トラと人の距離が比較的近いので、特に見やすい動物園です。
国内では、他に宇都宮動物園、群馬サファリパーク、伊豆アニマルキングダム等で見る事が出来ます。
◆◆スマトラトラ◆◆
スマトラトラは、インドネシアのスマトラ島に生息している、最も南に棲むトラです。
その為、トラの中でもその大きさは最小となっています。
野生下では300~500頭しか生息しておらず、絶滅が心配されています。
神奈川県の野毛山動物園のスマトラトラ「ミンピ」。現在は上野動物園に移籍。
最小のトラと言ってもその体長は2メートルをゆうに超え、密林の王者であることに変わりはありません。
野毛山動物園の人気者でしたが、お見合いの為上野動物園にやってきました。
上野動物園では他に、「ブラン」「インダ」「マニス」というスマトラトラを見る事が出来ます。
上野動物園のトラ舎は野生に近い環境で、木々の間をゆっくりと移動するトラ達を見る事が出来ます。
次は神奈川県よこはま動物園ズーラシアのスマトラトラ。
こちらも、野生に近い敷地の中で生き生きと動き回る(あるいは寝転がって昼寝をしている)スマトラトラトラを見る事が出来ます。
スマトラトラは、既に人間の手によって絶滅してしまったインドネシアのジャワ島の「ジャワトラ」、バリ島の「バリトラ」と近縁とされていて、
約1万2000~6000年前に海面が上昇した際に、同じ祖先をもつトラがそれぞれの島に取り残され、進化したトラとされています。
大規模な森林の伐採や密猟などにより、年々数を減らしています。
◆◆アムールトラ◆◆
最後はアムールトラです。
英名ではシベリアンタイガーとも呼ばれ、(本来は)現存するトラの中では最大種となります。
その体重は最大で300kgにも達し、優れた体格と高い寒さへの耐性を持っています。
人間による開発で生息地を追われ、獲物が十分に捕れない事から、ベンガルトラと体の大きさが逆転する現象も起きています。
その一方で、人間から餌を貰える飼育個体は、本来のがっしりした体格を十分に見せてくれます。
大阪府の天王寺動物園より。在りし日のアムールトラ「センイチ」
2021年3月に亡くなってしまいましたが、天王寺動物園に居たアムールトラです。
当時、国内最高齢のアムールトラで、ベンガル系トラ、スマトラトラと比べてもひと際大柄な体をしています。
ちなみに名前の由来は、阪神タイガース監督の故星野仙一さんからでした。
阪神タイガースのお膝元でもある天王寺動物園では、とてもトラをフィーチャーした展示を行っています。
亡くなったセンイチの代わりに、秋田市大森山動物園からアムールトラの風くんが来園しています。
その「センイチ」の生まれ故郷である、東京都の多摩動物公園のアムールトラ。
こちらも立派な体をしています。
アムールトラは他の亜種のトラと比べて深く長い体毛を持っており、極寒のシベリアでも生息する事が出来ます。
アムールトラも野生下では500頭ほどしか残っておらず、保護活動が行われています。
いかがでしたでしょうか。
干支にはネコは居ませんが、威風堂々としつつ、どこか愛らしい姿も見せてくれるトラが、たくましくその存在を主張してくれています。
動物園でも人気者の彼らですが、野生下では急速にその数を減らしている、絶滅危惧種のひとつです。
20世紀の初めは10万頭とも言われたトラは、今では全ての亜種を含めても3000頭ほどしか生き残っていないと言われています。
力強さと美しさの象徴であるトラが、100年後も生きて見られる事を願いたいです。
新型コロナの感染者数は、日本でこそ大きく減少しましたが、まだまだ世界で見れば予断を許さず、
社会全体に残された傷跡を癒す時間もまだまだ必要になりそうです。
今こそトラの力強いパワーにあやかって、今年はさらなる飛躍の一歩を遂げたいと思っています。