人的資本とは?人的資本経営の進め方や有効な施策を解説!

近年、企業の成長戦略において「人的資本」の重要性が高まっている。人的資本とは、従業員の知識やスキル、経験など、企業の価値を生み出す要素を指す概念である。
これを活用する「人的資本経営」は、ESG投資の拡大や労働市場の変化に伴い、多くの企業にとって不可欠な戦略となっている。
本記事では、人的資本の基本的な概念や人的資源との違い、企業が人的資本経営を進めるメリットや具体的な施策について詳しく解説する。
INDEX
人的資本とは
人的資本とは、企業における従業員の知識、スキル、経験、そして人間関係など、価値を生み出す要素を指す概念です。
これらの要素は、企業の競争力や成長に直結しており、人的資本の質が企業の成功を左右すると言っても過言ではありません。
人的資本は単なる人材の数だけではなく、個々の能力や特性が組織全体のパフォーマンスに与える影響を重視する考え方です。
人的資本と人的資源の違い
人的資本と人的資源の意味合いには明確な違いがあります。人的資本は、従業員が持つ知識、スキル、経験など、企業の価値を生み出す要素を指します。
一方、人的資源は、企業が保有する人材そのものを指し、採用や配置、育成といった管理の対象となります。
つまり、人的資本が人材を投資対象として、将来的にも価値を生み出すものと考えているのに対して、人的資源は消費する時点の価値のみを見ているのが特徴です。
人的資本が注目されている理由とは
近年、人的資本が注目される背景には、いくつかの要因があります。これから説明する要因が相まって、人的資本の重要性がますます増しているのです。
人材の多様性を重視するようになっているから
近年、企業は人材の多様性を重視するようになっています。これは、異なるバックグラウンドや視点を持つ人々が集まることで、創造性や革新性が高まると認識されているからです。
多様な人材が集まることで、問題解決のアプローチが多様化し、より良い意思決定が可能になります。また、顧客のニーズも多様化しているため、様々な視点を持つチームが必要とされています。
さらに、多様性を尊重する企業文化は、従業員のエンゲージメントを高め、優秀な人材の確保にもつながります。多様性を重視することで、企業は社会的責任を果たし、持続可能な成長を実現するための基盤を築くことができるのです。
ESG投資への関心が高まっているから
近年、ESG投資が注目を集めており、企業はその対応を迫られています。投資家は、企業の持続可能性や社会的責任を重視するようになり、人的資本の重要性が一層増しています。
人的資本経営を実践することで、企業は従業員のスキルや知識を最大限に活用し、持続可能な成長を実現することが可能です。特に、人的資本に対する投資は、企業の社会的評価を高め、投資家からの信頼を得るための重要な要素となっています。
ESG投資の観点から、企業が従業員の成長や多様性を重視する姿勢を示すことは、長期的な競争力を維持するために不可欠です。
米国での人的資本開示の義務化が始まったから
近年、米国では企業に対して人的資本に関する情報の開示が義務化される動きが進んでいます。この流れは、投資家やステークホルダーが企業の持続可能性や成長性を評価する際に、人的資本が重要な要素であることを認識した結果です。
人的資本の開示により、企業は従業員のスキルや経験、教育訓練の状況などを透明に示すことが求められます。これにより、企業は自社の人的資本を戦略的に活用し、競争力を高める機会を得ることができます。
また、投資家は企業の人的資本の質を評価することで、より良い投資判断を行うことが可能になります。
企業が人的資本経営に取り組むメリット
企業が人的資本経営に取り組むことで得られるメリットは多岐にわたります。これから解説するメリットを通じて、企業は持続的な成長を実現することができるのです。
組織の生産性が上がる
人的資本経営を導入することで、組織の生産性が向上することが期待されます。これは、従業員のスキルや知識を最大限に活用することができるためです。
具体的には、従業員が自らの能力を発揮しやすい環境を整えることで、業務の効率化が図れます。また、人的資本を重視することで、従業員のモチベーションが高まり、チームワークが強化されるため、結果として生産性が向上するのです。
さらに、人的資本経営は、従業員の成長を促進する施策を通じて、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。例えば、定期的な研修やキャリア開発プログラムを実施することで、従業員のスキルアップを図り、業務に対する理解を深めることが可能です。
従業員の能力が可視化される
人的資本経営を進めることで、企業は従業員の能力を可視化することが可能になります。具体的には、従業員のスキルや経験、パフォーマンスをデータとして収集・分析することで、個々の強みや改善点を明確にすることができます。
この可視化は、適切な人材配置や育成プランの策定に役立ち、組織全体のパフォーマンス向上に寄与します。
また、従業員自身も自分の成長を実感しやすくなり、モチベーションの向上につながるでしょう。結果として、企業はより効果的な人材活用ができるようになり、競争力を高めることができます。
従業員の帰属意識が高まる
人的資本経営を進めることで、従業員の帰属意識が高まることは、企業にとって大きなメリットとなります。帰属意識とは、従業員が自社に対して持つ愛着や忠誠心のことであり、これが強まることで、従業員はより積極的に業務に取り組むようになります。
人的資本を重視する企業は、従業員の意見やニーズを尊重し、働きやすい環境を整えることで、彼らのモチベーションを向上させることができます。
また、帰属意識が高まることで、従業員の離職率が低下し、企業の安定性が増すことにもつながります。長期的に見れば、従業員の定着は企業の成長に寄与し、競争力を高める要因となります。
投資家からの評価が高まる
人的資本経営を実践することで、企業は投資家からの評価を高めることができます。近年、投資家は企業の財務指標だけでなく、人的資本の質やその管理方法にも注目しています。
人的資本がしっかりと管理され、従業員のスキルや知識が最大限に活用されている企業は、持続可能な成長が期待できると見なされるためです。
また、人的資本経営を通じて企業が従業員の成長を促進し、組織全体のパフォーマンスを向上させることができれば、投資家はその企業に対してより高い信頼を寄せるようになります。結果として、資金調達の際に有利な条件を引き出すことができる可能性も高まります。
人的資本経営の進め方
人的資本経営を効果的に進めるためには、いくつかのステップを踏む必要があります。このセクションでは、人的資本経営の正しい進め方について解説します。
経営戦略と人材戦略を連動させるストーリーを構築する
人的資本経営を成功させるためには、経営戦略と人材戦略を一体化させることが不可欠です。まず、企業のビジョンや目標を明確にし、それに基づいた人材戦略を策定することで、組織全体が同じ方向に進むことができます。
このプロセスでは、経営陣が従業員のスキルや能力を理解し、どのように活用するかを考えることが重要です。
経営戦略と人材戦略を紐づけるにあたり、CEOの右腕として人材戦略と実行を担当するCHROを設置する企業も増えています。 また、社内外のステークホルダーとの対話内容を人材戦略に反映させる場合もあります。
目標と現状のギャップを埋めるために人事施策を検討する
人的資本経営を効果的に進めるためには、企業が設定した目標と現状のギャップを明確に把握し、それを埋めるための人事施策を検討することが不可欠です。
まず、企業のビジョンや戦略に基づいて、必要なスキルや知識を特定します。その後、現状の従業員の能力やパフォーマンスを評価し、どの部分に不足があるのかを分析します。
このギャップを埋めるためには、研修プログラムの導入や、メンター制度の活用、さらには外部からの専門家アドバイスを求めるなど、多様な施策が考えられます。実現可能な範囲で、一番影響度が大きいものから優先的に行うことが重要です。
KPIを設定して人事施策の実行する
人的資本経営を効果的に進めるためには、具体的なKPIを設定することが不可欠です。KPIは、企業が目指す目標に対する進捗を測定するための指標であり、これを明確にすることで、従業員のパフォーマンスや人事施策の効果を可視化できます。
ここで設定したKPIを基に人事施策を実行することで、企業は戦略的に人的資本を活用し、組織全体の生産性向上を図ることができます。また、定期的にKPIを見直し、必要に応じて施策を調整することで、より効果的な人的資本経営を実現することが可能です。
開示方法を検討する
人的資本経営を進める上で、企業はその成果や取り組みを適切に開示することが重要です。開示方法には、財務報告書や年次報告書、ウェブサイト、プレスリリースなど、さまざまな手段があります。特に、透明性の高い情報提供は、投資家やステークホルダーからの信頼を得るために不可欠です。
また、人的資本に関する指標やデータを定量的に示すことで、企業の成長戦略や人材戦略がどのように連動しているかを明確に伝えることができます。
これにより、企業の価値をより具体的に理解してもらうことができ、人的資本経営の重要性を広く認識してもらうことが可能になります。
効果測定・改善を行う
人的資本経営を成功させるためには、施策の効果を定期的に測定し、必要に応じて改善を行うことが不可欠です。
まず、設定したKPIをもとに、施策の進捗状況や成果を評価します。この評価は定量的なデータだけでなく、従業員のフィードバックやアンケート結果などの定性的な情報も考慮することが重要です。
次に、効果測定の結果を分析し、どの施策が効果的であったか、または改善が必要であるかを明確にします。これにより、企業は人的資本に対する投資のリターンを最大化し、持続的な成長を促進するための戦略を見直すことができます。
人的資本経営において有効な施策とは
人的資本経営を成功させるためには、具体的な施策が不可欠です。これから解説する施策を組み合わせることで、人的資本経営の成功に繋がります。
人事評価制度を見直す
人的資本経営を推進する上で、人事評価制度の見直しは欠かせません。従来の評価制度は、業績や成果に基づくものが主流でしたが、これからは従業員の成長やスキルの向上を重視する必要があります。
具体的には、定期的なフィードバックや360度評価を取り入れることで、従業員の多面的な評価が可能になります。
また、評価基準を明確にし、透明性を持たせることで、従業員のモチベーション向上にもつながります。これにより、個々の能力を最大限に引き出し、組織全体のパフォーマンス向上を図ることができます。
人材育成制度を充実させる
人的資本経営を推進する上で、人材育成制度の充実は欠かせません。企業が持つ最も重要な資源は人であり、その能力を最大限に引き出すためには、継続的な教育とスキルアップが必要です。
具体的には、研修プログラムの多様化や、メンター制度の導入、キャリアパスの明確化などが挙げられます。これにより、従業員が自ら成長できる環境を提供し、各々が成長していきます。
また、育成制度を通じて得た知識やスキルは、組織全体の競争力向上にも寄与します。したがって、企業は人材育成に対する投資を惜しまず、戦略的に取り組むことが求められます。
職場環境を改善する
職場環境の改善は、人的資本経営において非常に重要な施策の一つです。快適で安全な職場は、従業員のモチベーションや生産性を向上させる要因となります。
具体的には、オフィスのレイアウトや設備の見直し、適切な照明や空調の整備、さらにはコミュニケーションスペースの確保などが挙げられます。
また、リモートワークやフレックスタイム制度の導入も、従業員の働きやすさを向上させる手段です。これにより、仕事とプライベートの両立がしやすくなり、従業員のストレス軽減にもつながります。
福利厚生を充実させる
従業員の多様なニーズに応じた福利厚生の提供も効果的です。例えば、育児休暇や介護休暇の整備、在宅勤務手当の支給、オフィス環境の改善などが挙げられます。
また、リモートワークの普及に伴い、在宅勤務手当やオフィス環境の整備も重要な要素となっています。これらの施策を通じて、従業員が安心して働ける環境を整えることが、人的資本経営の成功に繋がります。
充実した福利厚生制度は、従業員の満足度やモチベーションを高めるだけでなく、企業の魅力を向上させ、優秀な人材の確保にも寄与します。
多様性に富んだ組織にする
多様性に富んだ組織を構築することは、人的資本経営において非常に重要な施策の一つです。多様性とは、性別、年齢、国籍、文化、価値観など、さまざまな背景を持つ人々が集まることを指します。
多様な視点やアイデアが集まることで、競合優位性が強まることで市場内でのシェア拡大に繋がります。
また、多様性を重視することで、従業員の満足度やエンゲージメントも向上します。異なるバックグラウンドを持つ人々が共に働く環境は、相互理解を深め、チームワークを強化する要因となります。
まとめ
人的資本は、企業の成長において欠かせない要素であり、人的資本経営を通じてその価値を最大限に引き出すことが求められています。従業員の知識やスキルを活用し、組織全体の生産性を向上させるためには、戦略的な人事施策が必要です。
今後も人的資本の重要性は増していくと考えられ、企業はその取り組みを強化することで、持続可能な成長を実現できるでしょう。

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