システムエンジニアの人事評価のポイントとは?基準や導入時の留意点を解説
会社が従業員を正しく評価するための制度が「人事評価」です。
人事評価は従業員にとってはもちろん、企業や組織が成長するためにも欠かせない業務です。
しかし、システムエンジニアの人事評価は基準が難しく、人事評価方法に課題を抱えている企業も多いのではないでしょうか?
そこでこの記事では、システムエンジニアの人事評価について、人事評価の目的や、人事評価を実施する際のポイントについて詳しく解説します。
あわせて、システムエンジニアの人事評価で留意すべきポイントについても合わせて解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
INDEX
エンジニアの人事評価の目的とは?
人事評価とは、従業員の実績やスキル、勤務態度などを評価する仕組みのことです。 人事評価は給与や役職に直接反映されるため、従業員のモチベーションにつながる重要な要素といえるでしょう。 一般的な企業の人事評価でとくに重視される項目は「能力評価」と「業績評価」です。 能力評価は職務を遂行するに当たり、発揮した能力について評価するものであり、知識や技能はもちろんのこと、企画力や判断力などの潜在的な能力も評価対象となります。 業績評価は仕事での業務の成果を評価するものです。業績目標を設定した上で、目標の達成度が評価されます。 システムエンジニアにおける人事評価も、その目的に大きな違いはありません。 業績や能力を評価した上で給与に反映させていきます。 しかし、システムエンジニアは業務の性質上、営業職のように成果が数字として表れるわけではありません。 その結果、評価者によって業績の判断に差異が生じるため、評価に不満を持ってしまうことも少なくありません。 システムエンジニアの人事評価では従業員が評価に不満を持たないように、明確な評価基準を決め、正当に評価できる方法を考える必要があります。
企業がシステムエンジニアの人事評価で悩みがちなポイント
企業がシステムエンジニアの人事評価をする際、以下のようなポイントで悩みがちです。 ・エンジニア側と企業側の考え方の差異が生じやすい ・プロセスが見えにくい ・数年後のロールモデルが見えない それぞれ詳しく解説します。
エンジニア側と企業側の考え方の差異が生じやすい
人事評価の一般的なイメージとして、エンジニア側はスキルのみが評価されていると思いがちです。 しかし、実際には企業側は個人の能力を総合的に評価しています。 具体的には、コミュニケーション能力や問題処理能力などです。 スキルはエンジニアにとってはもちろん重要な評価項目ではあります。 しかし、システムエンジニアはチームでプロジェクトに取り組むことが多い以上、良い人間関係を構築できるようなコミュニケーション能力も企業側からすれば重要なのです。 いかにスキルが優れていようと、協調性に欠けるようでは良い評価とはならないでしょう。 このように、企業側の評価項目とエンジニアが考えている評価項目に差異が生じやすく、エンジニアが人事評価に不満を持ってしまう原因になりがちです。
プロセスが見えにくい
システムエンジニアの仕事は業務の性質上、プロセスが見えにくいという問題があります。 とくにSESエンジニアの場合はクライアント企業に駐在しての業務となるため、評価する上長が近くにおらず、業務プロセスを確認しないまま評価をしなければなりません。 プロセスで評価しにくい場合は、どうしても「成果」で評価されやすくなりますが、システムエンジニアの仕事は基本的にチームでプロジェクトに取り組むため、結果や成果をそのまま個人の評価としにくい場合もあります。 また、業務内容によっては、成果が出るのが「数年後」といった長期スパンになる場合もあり、その場合は成果だけでは評価が出せません。 このように、システムエンジニアの評価を「成果」だけでしてしまうと正当な評価ができない場合があるため、本人のスキルや会社への貢献度などもあわせて評価する必要があります。
数年後のロールモデルが見えない
業績評価は基本的に年2回行われるため、業績目標も半年ごとのスパンで立てることがほとんどです。 しかし、この形式で業績を評価していく場合、エンジニア側は「半年の間に良い評価をもらうためにはどうすればよいか」は意識するものの、さらにその先、数年後のロールモデルまでは見えていない場合が多いです。 企業側としては長期的な計画を視野に入れていたとしても、長期的な目標を立てられるエンジニアが少ないため、どうしても長期スパンの計画を実行しづらくなってしまいます。
システムエンジニアの人事評価のポイント
それでは、システムエンジニアの人事評価を正しく行うには、どのように実施すべきなのでしょうか? ここでは、システムエンジニアの人事評価のポイントについて詳しく解説します。
定量評価を実施する
人事評価を行う際の評価方法に「定量評価」と呼ばれる方法があります。 定量評価は、数値化したデータをもとに評価する方法です。 似た言葉に「定性評価」がありますが、こちらは逆に数値化できないものを評価基準としています。 営業職と違い、エンジニアの業務を数値化することは難しいですが、定性評価だけを軸にしていては評価者によって評価にぶれが生じてしまうため、エンジニアでも定量評価を実施することがおすすめです。 ただし、人事評価を企業側、エンジニア側双方が納得できるものにするためにも、評価基準を明確にした上で定量評価を導入しましょう。 また、定量評価を実施するためには、数値化できるように評価項目を細分化することが大切です。 ここでは、「組織への貢献度で評価した場合」と「スキルで評価した場合」を例に挙げて具体的に解説していきます。
組織への貢献度で評価した場合
組織への貢献度で評価する場合は、始めに「何をもって組織に貢献したと見なすのか」を明確にしましょう。 具体例としては「組織全体のスキルアップのための行動」などです。 次に、それぞれの評価対象の「貢献度の高さ」や、「評価対象を達成したと見なす基準」を明確に設定しましょう。 その際、評価対象となる行動や評価対象を達成したと見なす基準をなるべく具体的に設定することで、より数値化しやすくなります。 加えて、達成できたかどうかの判断もしやすくなるでしょう。
スキルで評価した場合
スキルで評価する場合も、貢献度で評価する場合とそれほど変わりはありません。 「特定のスキルを習得している」ことを評価項目とし、「何をもってスキルを習得していると見なすのか」を設定しましょう。 スキルを評価するための定義を具体的に設定することで、単純な評価だけでなく、現時点でのスキル習熟度を測ることも可能となります。 ただし、ここで設定した定義によっては、企業とエンジニアの間で評価に乖離が発生する場合があるため注意しなければいけません。 たとえば、習得基準として「自分だけで開発を進めることができる」としていた場合、エンジニア側は「自分だけで開発を進められた」と感じていたとしても、企業側がそう思っていない場合があります。 このような場合、企業側の判断では習得基準を満たしていないため、基準を満たしていると思っているエンジニア側からすると評価に不満を感じてしまう可能性があるでしょう。 そのため、エンジニアを評価する際は、次に紹介する「上長評価」と「自己評価」のどちらも実施することが大切です。
上長評価と自己評価をどちらも実施する
上司がエンジニアを評価するだけでは、一方通行な評価となり、エンジニア側からすると納得のいかない評価となる場合があります。 そのため、上長評価の前に、エンジニア自身に「自己評価」をしてもらい、具体的にどのような点を評価してもらいたいのかを明確にさせます。 その後、自己評価と上長評価を比較し、両者の評価が剥離している部分についてはその原因を話し合うことで、エンジニアが「評価に納得できない」といったミスマッチを防げるでしょう。
エンジニア自身による自己評価のメリット
上長評価と自己評価どちらもすることが大切だと解説しましたが、自己評価を実施することはエンジニア自身にも大きなメリットがあります。 具体的には、エンジニアがあらためて自己評価を行うことで、自分自身を客観的に見つめ直すことができ、その結果、自身でも自覚していなかった良い点、悪い点を発見することが可能です。 自己評価で気づいたことは、今後の業務にも有益なものとなるでしょう。 また、自己評価は、評価の高い低いに関わらず、自分自身が納得できる評価であることは間違いありません。 評価が高ければモチベーションにつながり、評価が低かったとしても改善点を素直に受け入れられるでしょう。 評価基準さえ用意してあれば誰でも手軽に実施できるため、定期的に自身を評価し、業績の振り返りに活用することも可能です。
客先で常駐しているエンジニアの評価には注意が必要
社内で顔を合わせる機会の多い社内エンジニアとは違い、SESエンジニアのように客先で常駐しているシステムエンジニアは、仕事ぶりを実際に目にする機会がないため評価が難しくなります。 ここからは、客先で常駐しているシステムエンジニアを評価する場合の注意点について確認していきます。
コミュニケーションを取れていない上司からの評価に不満も
客先に常駐しているシステムエンジニアは、上司と顔を合わせたり会話をしたりする機会が少なく、普段から上司とあまりコミュニケーションを取れていません。 そのような、普段から接触の機会がない上司から評価をされることに対し、不満を持つエンジニアもいるでしょう。 また、上司としても直接エンジニアの仕事ぶりを見ることができないため、顧客からの評価に頼りがちとなってしまいがちです。 その結果、評価が顧客の主観によるものとなってしまい、公正な評価とはいえなくなってしまいます。 しかし、この点はエンジニアと意識してコミュニケーションを取ることで解決できます。 普段からコミュニケーションを取ることで、業務の進捗などを正確に把握でき、双方が納得のいく評価をつけられるでしょう。 良好な関係を築けていれば、評価に対して不満に思われることも少なくなるはずです。
定期的なミーティングを実施することが大切
客先常駐エンジニアと良好な関係を築いていくためにも、定期的にミーティングを実施することが大切です。 ミーティングは1on1で実施し、少なくとも毎月1回はミーティングの時間を設けましょう。 SESエンジニアのような客先常駐のエンジニアは本社に赴く機会が少ないため、仕事で不満があっても上司に相談することができず、自分ひとりで抱えてしまいがちです。 不満をため込み続けるのはメンタルに多大な影響をもたらすため、定期的に上司に相談できる機会を設けるだけでも、エンジニアの精神的負担を軽減できるでしょう。
システムエンジニアの人事評価で留意すべきこと
ここまで解説してきたように、システムエンジニアの評価では、とくにSESエンジニアのようにクライアント先に駐在している場合、エンジニアと上長の評価に差が出やすく、エンジニアが不満を感じやすいという注意点があります。 そのため、システムエンジニアの人事評価では、さまざまな点に留意しなければいけません。 ここでは、システムエンジニアの人事評価で留意すべきポイントについて解説していきます。
現場とコミュニケーションを取りながら評価する
システムエンジニアの人事評価は、現場とコミュニケーションを取りながら行うようにしましょう。 エンジニアは専門的なスキルが必要な職種のため、エンジニアではない上司がエンジニアを正当に評価すること自体がそもそも難しいとされています。 上司がエンジニア出身だったとしても、長年現場を離れているために現在主流となっているスキルに明るくない可能性もあります。 そのため、エンジニアの評価項目は現場のエンジニアの意見を取り入れながら作成しましょう。 現場と積極的にコミュニケーションを取り、エンジニアを理解しようとする姿勢を示すことが、エンジニアの人事評価を実施する上で重要なポイントとなります。
他業種と比較して評価基準がぶれやすい点に注意
エンジニアは業績を数値化することが難しいため、他業種と比較して評価基準がぶれやすいです。
上司とエンジニアで評価基準がずれていては、お互いに納得できる評価とするのは難しいため、評価基準を明確にしましょう。
先にも解説したように、定性評価だけを実施するのではなく、定量評価も実施して、エンジニアが納得できるような評価基準となるように心がけるようにしてください。
自社内で働く
自社内で働くSEは、社内の情報システム部門に所属するケースや、独立したIT担当者として、社内のITシステムに関わる業務を行うケースなどがあります。 自社のシステム開発や運用保守、社内システムの構築、自社の社員からのITに関するさまざまな問い合わせ対応、社内のセキュリティ対策など、さまざまな業務に関わる可能性があるでしょう。 担当する業務によって必要とするスキルは変わりますが、ソフトウェアやハードウェアの知識から、セキュリティの知識、設計から開発・保守までの一連の業務経験など、幅広いスキルと知識が必要です。 ただし、クライアントを相手にする業務ではなく、自社のシステム開発などに従事するケースが多いため、比較的残業が少ないといったメリットがあります。
客先で働く
客先で働くSEは「客先常駐SE」と呼ばれ、SES企業に雇用されることにより、SESエンジニアとして客先に常駐する場合や、派遣社員として派遣先で働く場合などがあります。 SESエンジニアの場合は、SES企業の社員として所属しながらクライアント先に常駐し、クライアントの依頼に合わせてシステム設計を行うため、プロジェクトごとに勤務場所が変わることも多いです。 一方で、派遣社員として働く場合は、派遣会社が雇用主となり、派遣会社の指示によって派遣された先の企業が勤務先となるのです。業務指示は派遣先企業から受けますが、給料の支払いは派遣会社からされ、契約期間の間だけ派遣先で働きます。 SESエンジニアと派遣社員は同じように客先で働く形となっていますが、派遣社員は派遣事業者の社員ではないため、契約期間が終わるとフリーになります。 しかし、SESエンジニアはSES企業の社員なので、責任の大きさがまったく違うのです。 また、SESエンジニアとして働くことで、さまざまな企業のプロジェクトに参画できるというメリットはありますが、プロジェクトごとに環境が変化するので、環境の変化に対応していく能力も必要となります。
さまざまな働き方が選べるSEは女性にもおすすめの職業!
IT業界は男性の比率が高いものの、女性でもエンジニアを目指す方が増えています。 とくにSEという仕事は、スキルや経験次第で男女関係なく高い収入を得られるため、やりがいのある仕事と言えるでしょう。 また、SEは技術職であるため、出産などにより離職をしても、転職や復職がしやすいという強みもあります。 さらに、デスクワークなので、体力面でハンディキャップを感じることも少ないでしょう。 IT業界は、テレワークやフレックスタイムなどの柔軟な働き方ができる企業が多く、ライフスタイルの変化に応じて働き方を変えることも可能なため、SEは女性にもおすすめの職業と言えます。 もし、SEとしてキャリアアップをすれば、SEをはじめとしたITエンジニアの管理業務に携わることになるでしょう。 そんなときは、SES管理に最適なツールとしてFairgrit®があります。 ぜひ、煩雑な管理業務にはFairgrit®をお役立てください。 参考:IT業のSE(システムエンジニア)職の人事評価とは?評価項目・評価基準・ポイントなど | JINJIPACK 参考:エンジニアの評価制度とは?評価基準や制度内容の注意ポイントは?|おかねチップス
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