SES事業とは?起業する魅力や失敗例などを紹介
SES事業は、創業にかかる初期コストを低く抑えられることなどから、比較的参入障壁が低いといわれています。しかし、具体的にどのように始めればよいのかわからない、事前にどのような準備が必要か知りたいという方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、SES事業で起業するメリットや、起業するために必要な事前準備について解説します。また、SES事業の起業で失敗してしまう原因や、SES事業における重要ポイントも解説しますので、ぜひ参考にしてください。
INDEX
SES事業とは?
SES(システムエンジニアリングサービス)は、システムやソフトウエアの開発、保守、運用に関する特定の業務に対して、クライアント企業にエンジニアの技術力を提供する技術支援サービスのことです。
SES事業は、現在エンジニアが足りていない企業に対して、企業が求める技術力を持つエンジニアを提供し、その対価を受け取ることで収益を上げます。
【関連記事】
SESの市場規模はどれくらい?業界全体の将来性やSES市場に携わるメリットを紹介
SES事業で起業する魅力やメリット
IT業界の中でも、とくにSESは需要が高く、右肩上がりの成長を続けているサービスです。ここからは、SES事業で起業する魅力やメリットを解説します。
ビジネスモデルがシンプルで参入しやすい
SES事業は、システムやソフトウエアの開発、保守、運用といった案件を営業担当が受注し、エンジニアの労働力を提供して利益を得るシンプルなビジネスモデルです。
ビジネスパートナー企業やフリーのエンジニアとのネットワークが構築できていれば、エンジニアを採用する必要がないため、会社経営において大きなウエイトを占める人件費を抑えることができます。
また、起業にあたって特別な許認可が必要なく、とくに資格や免許も必要ありません。さらに、エンジニアは基本的にクライアント先に常駐して働くため、自社のオフィスも最低限の大きさで足りる可能性があります。
つまり、SES事業はビジネスモデルがシンプルで、起業後の運転資金も低く抑えられることが魅力だといえるでしょう。
キャッシュフローが安定しやすい
SES事業で起業する大きなメリットは、キャッシュフローが安定しやすいことです。なぜなら、クライアント企業との契約が決まりさえすれば、エンジニアを提供している期間は継続的な売り上げが見込めるからです。
エンジニアの稼働率を高めることに特化した経営戦略を立て、軌道に乗せられれば安定した経営を維持できます。また、継続的な売り上げが見込めることから収益予測が立てやすく、あらかじめ契約終了時期を把握できるため、ある程度のリスクには柔軟に対応できることも、キャッシュフローが安定しやすい理由といえるでしょう。
M&Aによりまとまったキャピタルゲインも狙える
自ら立ち上げたSES企業を売却することで、まとまったキャピタルゲイン(※)を手にするチャンスもあります。
IT業界は市場規模が拡大している業界であり、エンジニア確保の手段としてM&Aが活発に行われています。また、IT、ソフトウエア業界におけるM&Aは2017年から3年連続で前年実績を上回っており、2019年のM&Aの数は135件で、2008年以降の12年間で過去最多となりました。
参考:過去最多のM&A 2019年のIT・ソフトウエア業界 | M&A Online – M&Aをもっと身近に。
SESの需要の高まりが追い風となり、創業数年で小規模のSES企業でも高値で売却される事例が見られます。経営規模を拡大していくのか、まとまった資金の獲得を狙って売却するのか選択できる点も、SES事業で起業する魅力のひとつです。
(※)キャピタルゲインとは
キャピタルゲインとは、株式や不動産などの資産を売却した際に生じる利益(売買差益)のことです。M&Aにおいては、売り手(譲渡企業)の株式が売買され、売り手のオーナーは自社の株式を売却することで売却益を得ます。
SES事業で起業するために必要な事前準備
SES事業の起業には、入念な準備が欠かせません。ここからは、SES事業で起業するために必要な以下のような事前準備について解説します。
1.市場調査を行う
2.競合調査を行う
3.差別化の戦略を立てる
4.ビジネスモデル、収益モデルを検討する
5.資金調達方法を考える
1.市場調査を行う
起業前の市場調査で、市場の動向や顧客のニーズを事前に把握しておくことが大切です。市場調査を行うことでSESの料金相場やSES企業の売上規模など、業界の現状をつかめます。
現状の詳細を把握することによって、どういったかたちで参入すればよいのか判断しやすくなるでしょう。どのような専門知識が必要になるのか、顧客からどのようなスキルが求められているのかなど、集めた情報をもとに分析することで、より効果的なサービスの開発につなげることができます。
2.競合調査を行う
競合調査は、起業後に自社が業界で生き残れるかどうかを判断するための重要なステップです。自社の競合となる企業が提供しているサービス内容や価格帯、強みや弱みなどさまざまな側面から調査することで、自社の改善点や課題の洗い出しができます。
競合他社に打ち勝つ強みが自社にあるのか、また、現時点で他社に劣る部分をどう改善するのかをじっくり検討するためにも、競合調査の実施をおすすめします。
3.差別化の戦略を立てる
需要が増え続ける業界では、参入者が増える傾向にあります。とくに、参入障壁が低いSES事業では新規参入が増加している状況です。増え続ける競合他社に対抗するためには、提供するサービスをユニークなものにして他社と差別化し、競争優位性を高める戦略を立てることが必須となります。
競合他社が持っていない強みを自社で生み出せないか、エンジニアのスキルを組み合わせて独自性のあるサービスを提供できないかなどを検討してみましょう。
4.ビジネスモデル、収益モデルを検討する
ビジネスモデルと収益モデルは、経営や事業を継続していくための重要な要素です。
ビジネスモデルとは、その事業がどのような価値を生み出せるのか、また、生み出した価値をどのようにして市場に提供するのかの仕組みのことを指します。対して収益モデルとは、事業にまつわるモノとお金の流れを構造化したものです。
SES事業のビジネスモデルを考えるときには、エンジニアの確保手段が大きなポイントとなります。自社でエンジニアを採用するのか、ビジネスパートナー企業からエンジニアを確保するのか、フリーランスのエンジニアに依頼するのかといったように、どのエンジニアで事業を行うかによってかかる費用やメリット、リスクなども異なります。
また、SES事業ではクライアント企業との契約が続く限り、継続して収益が発生します。即戦力となるエンジニアを多く確保するほど高品質なサービスを提供でき、それに伴って収益も継続的に上がるため、ストック型の収益モデルといえるでしょう。
ただし、即戦力となるほどのスキルを持っているエンジニアはその分コストもかかるため、採用基準をどう設定するのかも重要となります。
5.資金調達方法を考える
SES事業は、創業者がSES業界経験者であれば、極論をいうとパソコンひとつで始められるほど低コストで起業できるビジネスです。しかし、自社でエンジニアを雇用する場合は、エンジニアへの給与や採用活動費など、さまざまな費用が必要となります。
とくに、SES事業はクライアント企業からの入金前にエンジニアへの給与が発生するため、ある程度の運転資金を用意しておく必要があるでしょう。近年では、日本政策金融公庫の創業融資や助成金など、創業に関してのサポートも充実しています。
予期せぬトラブルや予定外の出費も考慮し、最低でも半年分ほどの運営費を用意しておくと安心です。
SES事業の起業で失敗してしまう要因
SES事業の起業で失敗してしまう要因には、以下のようなものが挙げられます。
・採用活動の失敗
・エンジニアの管理不足による失敗
・入金管理不足による失敗
ここでは、それぞれの要因について解説します。
採用活動での失敗
採用活動の失敗としては、未経験者やロースキルのエンジニアを多く採用してしまったというケースがあります。未経験者やロースキルのエンジニアは採用しやすいものの、教育コストの増加により、かえって負担が増してしまいます。
そのため、未経験者やロースキルのエンジニアは、自社の経営状況にあわせて無理のない範囲で採用を行い、マネジメントコストが増えすぎないように注意することが大切です。
また、即戦力となる人材を採用しようとしたがために、採用単価が高くなりすぎてしまったというケースもあります。単価が高くなりすぎた場合は自社の採用基準を見直し、適正な単価基準を決めておくことが大切です。
エンジニアの管理不足による失敗
クライアント企業に常駐しているエンジニアの勤怠管理を怠ってしまうと、クライアント企業からの信用失墜につながる可能性があります。
例えば、クライアント先に常駐しているエンジニアの無断欠勤が続き、自社で状況を把握できていなかった場合、「エンジニアの管理ができていない」と判断され、今後の契約継続にも影響するでしょう。
自社のエンジニアには、出退勤時や体調不良で休む際の連絡を徹底させるとともに、クライアント企業への報告も自社が責任を持って行うことが大切です。
また、SES契約では業務報告の一環として勤怠表の提出を義務付けているケースもあります。契約不履行にならないためにも、自社での勤怠管理フローは整備しておくようにしましょう。
入金管理不足による失敗
SES事業に特化している企業は、入金管理不足による黒字倒産が起こりやすいといわれています。なぜなら、支払いサイトの関係から、クライアント企業から入金される前にエンジニアへの給与支払いが発生することにより、資金不足に陥ってしまうケースがあるためです。
契約によっては月末締めで最大60日後にクライアント企業から入金となる場合もあり、仮に従業員の給料が月末締めの翌月20日払いだとすると、2回分の給料支払いに耐えうる資金を手元に残しておかなければなりません。
売掛金の入金管理を怠っていると、いくら売り上げが順調に推移していたとしても、月々の給料や諸経費の支払いまでに入金が間に合わないことによる黒字倒産が起こってしまいます。そのため、売掛金の入金額と入金サイクルを把握したうえで資金計画を作成することが大切です。
SES事業の起業で重要となるポイント
SES事業の起業において重要となるのは、資金、人材確保、マネジメントの3つです。ここでは、SES事業の起業で重要となる3つのポイントについて解説します。
余裕のある運転資金
SESは、先にも解説したように支払いが入金よりも先になることが多く、資金繰りの悪化を招きやすい事業です。そのため、入金前に発生するエンジニアへの給与支払いに耐えられるだけの余裕のある運転資金を確保しておく必要があります。
また、エンジニアを自社で採用する場合は、採用活動に費用がかかるだけでなく、オフィス代などの費用がかかる場合もあります。SES事業で発生するこれらのコストをもとに、必要な資金を慎重に検討しましょう。
経験豊富なエンジニアの採用
SES事業でしっかりと利益を上げたいのであれば、経験豊富なエンジニアを採用することが必須条件です。経験が浅いエンジニアや未経験者を多く採用してしまうと、クライアント企業からの要望に対応できずに待機状態になってしまう可能性があります。また、既存のエンジニアや営業担当に業務負荷がかかり、離職につながるリスクも高まるでしょう。
経験豊富でスキルの高いエンジニアを採用するためには、多くの採用コストがかかりますが、自社の売上規模を拡大していくためには、即戦力になる人材は必須といえます。自社の経営状況にあわせて採用単価を明確に決め、無理のない範囲で経験が豊富なエンジニアの採用を検討しましょう。
適切なマネジメント
SES事業では、契約条件が異なる請求書、勤務時間や交通費によって詳細が異なる請求書を、クライアント企業ごとに毎月作成しなければならず、クライアント企業やエンジニアの数が増えれば増えるほど営業担当の業務負荷も増加します。また、増大する業務に対応するために営業担当を増やしていくと、それに伴って人件費も増加してしまいます。
エンジニアの管理と営業活動を効率化するには、エンジニアの勤怠管理と請求書作成業務、営業担当の案件管理などをまとめて処理できるツールを導入するなど、効率の良いマネジメントができる方法を検討することも大切です。
ツールの導入には費用がかかりますが、そうした業務に対応するためのスタッフを増やさずに業務負荷を減らせる可能性があるため、自社の予算を考慮しながら検討してみましょう。
SES事業では資金管理やエンジニア管理が大切
SES事業はビジネスモデルがシンプルなことに加え、他業種と比較して多くの初期費用を必要としないことから参入障壁が低い業態です。
キャッシュフローが安定しやすく売却時のキャピタルゲインも狙える一方、資金管理はもちろん、経験豊富なエンジニアの採用やエンジニアの適切なマネジメントが求められます。
エンジニアの勤怠管理や請求書作成業務、営業担当の案件管理などに課題を抱えている方は、Fairgrit®の利用をご検討ください。Fairgrit®は、資金管理の中でも重要とされる入金管理や、エンジニアのマネジメントにおいて重視される勤怠管理の効率化に適したSES管理ツールです。
勤怠入力も簡単で、請求書もシームレスに発行、送付できるため、勤怠表の回収や請求額の計算、請求書の作成といった煩雑な作業にかかる時間と手間を大幅に省力化できます。また、勤怠不良や超過労働によりフォローアップが必要なエンジニアをFairgrit®が自動で抽出し、一覧化してくれるため、トラブルが起こる前に対応しやすくなります。
バックオフィス業務の効率化ツールとして、ぜひFairgrit®の導入をご検討ください。
参考:SES業界のM&A|譲渡・譲受メリット、注意点、高値売却のポイントは? | M&Aなら、みつきコンサルティング
Fairgrit®メディア編集部です。
SES業界にまつわる内容をはじめ、ITに関するお役立ち情報を不定期にお届けいたします!
私どもの情報が皆さまのなにがしかのお役に立てれば嬉しいです!
当編集部が企画・執筆・公開する記事は情報の公平性・有用性・再利用性に配慮した上で、十分な注意と調査のもと可能な限り客観的 かつ 一般的な情報・状況となるよう制作いたしております。
そのため、弊社としての見解やスタンス/ポリシーとは異なる内容や記載が含まれる場合がございますので、あらかじめご承知おきください。
また、さまざまな要因により事実と異なる内容や古い情報が含まれてしまう可能性もございます。恐れ入りますが、記事中の情報につきましてはご自身の判断と責任の元でご利用ください。
(弊社 ならびに 当編集部は、当アカウントがご提供しているコラム記事に関して、明示的か暗黙的かを問わず一切保証をいたしておりません。記事中の情報をご利用頂いたことにより生じたいかなる損害も負いかねます)